今年は猛暑日が続きましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
気温だけでなく、湿度が高いと食欲が落ちてしまう方も多いようです。
特に高齢者は食欲が落ちると、体重だけでなく気力なども低下してしまい、これまでと同様の日常生活を送ることが大変になることも。
今回は高齢者の食欲不振について、どのように対応すれば良いか解説していきます。
高齢者が食欲をなくす原因
活動量の低下
高齢になると、膝や腰の痛みや筋肉量減少のために活動しにくくなり、それまで行ってきた仕事や地域の活動などの頻度が低下するケースがあります。
活動量が減ると、食事で摂ったエネルギーを使う量も減るため、「お腹がすかない」と感じやすくなることも。たとえば、在宅訪問などで食欲がない理由を尋ねると、「動いてないから食欲がない」という話をよく耳にします。
病気による食欲低下
年齢に限らずですが、病気(特に糖尿病や腎臓病や肝臓病などの内臓疾患)がある方は、食事に制限が必要な方も多いと思います。
制限を気にして食べる量を必要以上に減らしたり、飲んでいる薬の影響で食欲が落ちてしまうこともあります。
生活環境の変化
高齢になってからの生活環境の変化は、食欲に影響を与えることが非常に多いです。たとえば、料理をすることが苦手なのに急に一人暮らしになってしまったり、体力が落ちて買い物に行けなくなり家にあるもので食事を済ませたりなど、さまざまな理由があります。
この場合は、本人の話をよく聞き、必要な栄養を摂るための方法を考えることが必要です。
精神的に悩むことが増える
意欲や体力の低下は、これまでの地域への参加や友人との関係が減ることにつながります。一人で家にいると、体に必要なものを食べたり、身体を動かしたりする機会が減少し、暮らしの活気がなくなりがちです。
このような状況が続くと、認知症のリスクも高まるので、悩みを相談できる人や気にかけてくれる人の存在が必要になります。
高齢者の食欲不振が続くとどうなるか
何かしらの原因で食欲不振が続くと、生きていくために必要な栄養が不足する低栄養になってしまうことがあります。
低栄養になると、筋肉量も減り、動くことに支障がでたり、転倒リスクも増加。骨密度が低い高齢者では骨折につながることもあり、特に注意が必要です。
また、食べる量が減ると、食事から摂取するはずの栄養だけでなく水分も不足するので、暑い夏場では脱水の心配も生じます。
このように食欲不振が続くと生活全体に影響することが多いので早めに関わり改善につなげることが必要です。
食欲がない時に試してほしいこと
好みの食事を食べてもらう
嗜好(好き嫌い)を考えて、食事を提供することが大切です。まずは好きな食べ物を摂ることで、ほかの食べ物にも興味を抱くことができるケースもあるからです。
以前、施設に入所されている高齢者の方で、食欲がなく施設の食事にほとんど手をつけない方がいました。そこでご家族に好物だった食べ物を持ってきていただき提供したところ、とてもうれしそうに召し上がり、その後は施設の食事を食べていただけるようになったことがあります。
少量の食事を数回に分けて食べてもらう
高齢者になると1度にたくさんの量を食べることができなくなる方もいます。1食分のごはんを半分にして2回に分けて食べてもいいでしょう。
また、朝・昼・夕の3回と決めずに食べられそうな時間に間食として、おにぎりやゆで卵、サンドイッチなどの軽食を取り入れるのも良いと思います。
口腔の状態に合わせた食べやすいものを準備する
高齢になると、口腔状態の悪い方もいます。歯が少なかったり義歯が合っていなかったりするために食べ物をしっかり噛むことができないケースや、噛むことができても、飲みこむときにむせてしまうために食べる量が減ってしまうケースも発生します。
噛む力が弱くなった方の食事は、噛む力に合わせた形態(煮込んで柔らかくする・肉や魚に切れ目を入れるなど)にする、むせが気になる方の食事は汁物や飲み物にとろみをつけたり、パンなどパサつく食べ物は牛乳等で浸してしっとりさせる等の工夫で食べやすくなります。
このほか、むせが気になる方は食べるときの姿勢も大事です。前かがみになっていたり、横になったままではむせやすいため椅子であれば両足の裏が床につくようにして座り、姿勢を正すほうが良いでしょう。
活動量を増やす
身体を動かす時間が短いと「お腹が空かないから食べない」となりやすいので、家では自分のできることを見つけてもらって、できるだけ身体を動かすことをおすすめします。
家や社会での役割があると、すべてのことへのやる気につながるものです。「歳をとったからゆっくりしている」だけでは体も心も弱っていくこともあるので、できることを見つけて活動量を増やすようにしてください。
これらの方法を試し、できるかぎり食べられるような工夫を凝らしてみてください。