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「問題行動」を起こす認知症の人は、とても迷惑な存在だ

突然、くつ下でテーブルを拭き出した利用者さん。それを見ていたほかの利用者さんは怒っちゃったし…。またこんなことが起きたら困るから、もう来ないでもらった方が良いのかな…

「宅老所みつばやあんき」を見学

認知症による「問題行動」がひどく、行き場を失った人がいます。家族は日中面倒を見られず、かといってデイサービスに行ってもなかなか落ち着けない人たちです。最終回となる今回は、筆者の一人(東田)が、「どんな人でも利用を断らない」と評判の「宅老所みつばやあんき」を訪ね、どう接しているのかを聞きました。

山梨県甲府市の宅老所「みつばやあんき」。代表の堀内直也さんにお話を聞きました

「宅老所みつばやあんき」は山梨県甲府市の駅にほど近い住宅地の中の一軒家です。「NPO法人みつばのくろーばー」の代表、堀内直也さんが2015年12月にオープンしました。「みつばや」は法人の名前、「あんき」は甲州弁で安心という意味です。堀内さん一家(お母さん、奥さん、幼稚園児の長女)は、職員やボランティアと一緒に、ここで定員10人のデイサービスを運営しています。

みつばやあんき流介護のコツ(1)
その人の過去を知れば行動の意味が見えてくる

その人なりの基準を知っておく

その人の得意な何かの先生になってもらう

ある日、デイサービスのさなかに、利用者のおじいさんが、自分の靴下を脱いでテーブルを拭き始めました。堀内さんは思わず「何やってるの?」とそのおじいさんに尋ねました。普通だと「やめてください」と怒って止めるところです。そうならないのは、堀内さんがその人の過去をよく知っているから。

そのおじいさんは、とても親切心が強く、きれい好きな人でした。だから、皆が使うテーブルが汚れているのを見て、親切心でくつ下を脱いで拭いたことがわかりました。

「認知症のいわゆる『問題行動』が出た場合、何か意味があるのだろうと思うようにしています。怒って止めてしまったら、その手がかりを見失う。周りの人が嫌がっても、この人にとってはこういう意味があるんだよ、と僕らが伝えてあげればいいんです」と堀内さん。

さらにその方法を聞くと、

「瞬間だけを捉えるとダメに思えることでも、過去がわかって何がその人の基準なのかを知っておくと、『問題行動』の裏の意味が見えてきます。過去を知ると、ときにはその人に対して情が湧き、認知症のケアというより、一人の人として繋がることができるんです」

という答えが返ってきました。

みつばやあんき流介護のコツ(2)
暴力を振るわれたら抱きしめる

スキンシップもコミュニケーションのひとつ

とは言っても、暴力を振るう人には情が湧きにくいものです。そんなとき、堀内さんはどうするのでしょうか。

「暴れると“やめて、みんなが悲しむから”と言ってギュッと抱きしめます。嫌がる人にはしませんが、基本的にはそうしています。先日も、80歳を過ぎてからボケた働き者のおじいさんが、過去と現在がごっちゃになって、混乱して暴れたのでギュッと抱きしめました。すると、思いっきり指を噛まれましたが…。あのときはイラッとしたけど、今はネタにしてしゃべれるからOKです」

そう語る堀内さんは、スキンシップを上手に取り入れています(様子を見て、お年寄りの手を握って話す、という風に)。

堀内さんは利用者とのスキンシップを欠かさない

原点は、大学時代に実習で行った特養の一人のおばあさんとの出会いでした。拘束され、「殺せ」と叫んでいるその人から離れられず、毎日手を握り続けていたので、実習の点数は最低だったとか。

でも、数日後にはそのおばあさんから「ありがとう」という言葉が出たのです。

「僕の手は、縛るためには使いたくない。生き直してもらうために使うんだ」

堀内さんがそう決意した瞬間でした。

みつばやあんき流介護のコツ(3)
その人の「愛すべき欠陥」を見つける

まずは相手との関係づくりから入る

「僕自身、お年寄りから“しょうがないヤツだ”と思われています。僕を見るたびに『働きに行け』と言う利用者がいるくらいです(笑)。そういえば、こんなことがありました。出て行ったおばあさんを見守るためにそっとつけていたら、気づかれて『ストーカーがいまーす!』と大声を出されたんです。おかげで地域がザワつきました(笑)。でもそれは、“どうしたの?”と人が寄ってきて参加できる余白が生まれた、ということでもありますよね。何も地域に見せなければ、地域は変わっていきません。認知症(ぼけ)という愛すべき欠陥が、地域や人を変えていくんだと思います」

「僕は見た目もパッとしないし、いろんなことができません」と自虐的に語る堀内さんは、認知症のお年寄りとの関係を「しょうがない」と思われた方の勝ちだと言います。

人間は、欠陥が大事なのではないだろうか――。欠陥を悪いことだと思わず、“面白いね”と読み替える試みが認知症ケアだというのです。

「ここはダメでもいいよ、という場所でありたい」と語る堀内さんにとって、認知症の「問題行動」は「愛すべき欠陥」に映っています。

みつばやあんきには認知症のお年寄りだけでなく、地域からさまざまな人が集う

「めったにない四つ葉のクローバーの花言葉は“幸運”。でも、たくさんある三つ葉のクローバーの花言葉は“幸福”なんです。目の前に幸福がたくさんあるのに、それをかき分けて幸運を探す必要はないですよね」

そう語る堀内さんの瞳は、やさしさに溢れていました。

宅老所 みつばやあんき(https://mitsubaya.wixsite.com/mitsubaya)

●地域密着型通所介護●介護保険外事業(赤ちゃんからお年寄りまで、障害の有無に関わらず早朝、夕方、夜間受け入れます)●寄り合い所(誰もが立ち寄れる集い場として、土曜日以外の9時~17時に家を開放しています)
〒400-0034 山梨県甲府市宝2-17-8 電話●055-215-6290 FAX●055-213-5015

みつばやあんきFacebook(https://ja-jp.facebook.com/npo.mitsubaya/)

「問題行動」だって「愛される欠陥」だと思えば大丈夫。みんなで共生できる地域をつくろう
第21問こたえは…

「問題行動」だって「愛される欠陥」だと思えば大丈夫。みんなで共生できる地域をつくろう

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※この連載は『その認知症ケアは大まちがい!』(講談社/2017年6月13日発行)
より内容を一部抜粋し、加筆修正したものです。

『その認知症ケアは大まちがい!』(講談社/2017年6月13日発行)

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三好春樹(著)東田勉(著)(講談社)

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