こんにちは!「音でタノしむ、音でラクする」をテーマに、高齢者介護現場での活用を目的とした楽器を開発している「ソニフル」の代表“いまたつ”こと今井竜彦です。
介護現場で「音楽」が日常的にある文化を目指し、音楽療法をはじめとした「音楽のチカラ」をメインに、余暇の時間をより楽しく過ごすためのヒントをご紹介しています。よろしくお願いします!
今回は「食べて幸せ、明日のえがお」をコンセプトに、口腔機能が低下した方でも食べられるケーキを販売されているカフェのカムリエさんを取材してきました。
口腔機能が低下した方のためにできる工夫や、そのメリットについて教えてもらいましょう!
食卓のみんながおいしいと思えるケーキは、介護の現場にどのような楽しい時間を生み出すのでしょうか?
在宅介護をされている方、施設の職員の方も、工夫を参考にしてみてくださいね!
いまたつと一緒に、介護現場のリアルを楽しく学んでいきましょう!
同じものを食べることで寂しさや疎外感がなくなる
今井:それではまず、“口腔機能が低下した方でも食べられるケーキ”をなぜ開発しようと思ったのか、その理由を教えてください。
志水さん:口腔機能が低下した高齢者の方に、みんなと一緒に同じものを食べ、コミュニケーションをとることで、笑顔になってもらえる時間を増やしてもらいたかったからです。
ご高齢になると口腔機能が低下しやすく、今まで食べられていたものが食べられなくなるというケースは少なくありません。
そこで食べやすくするために、きざみ食や・ミキサー食などにする工夫をして、介護食にするのが一般的です。
しかし、ご家族や施設の方々と食卓を囲んだときに、同じ食材を食べていたとしてもひとりだけ形が違うため、“みんなと違う”という寂しさを感じてしまうことがあります。
また、食べた後の感想も共有しにくいことから、疎外感があるという方も少なくありません。
そこで、普通食を食べている方でも、口腔機能が低下した方でも、“一緒に食べることができるケーキ”を食卓にお届けすることに至りました。
みんなと一緒に、同じものを食べる楽しさを感じてもらいたい。
コミュニケーションのきっかけとなり、一緒に笑いあえる時間を過ごしていただきたい。そんな想いからカムリエのケーキは生まれたのです。
今井:食卓にいるみんなと同じものを食べることで、互いに感想を伝えられるコミュニケーションをとることができるのですね。
幅広い方が食べられるようにする工夫
今井:こちらがカムリエさんのケーキなのですが、私の抱く介護食のイメージとは全然違い、とても美味しそうです!!どのような特徴があるのでしょうか?
志水さん:カムリエのケーキの一番の特徴は、先ほどもお話しした通り、普通に食事をとることができる方から舌でつぶして食事をする方まで、幅広い方に食べてもらえるという点です。
そのほかにも、5つの特徴があります。
- 1.食べやすくて飲み込みやすいスポンジ生地!
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通常のスポンジの場合、口中の水分を奪ってしまいやすく、唾液の少ない方にとってむせやすさや飲み込みにくさの原因となります。
そこでカムリエのケーキは「口の中で張り付かない・むせない・喉に詰まりにくい」特別なスポンジを使用しています。
一般的なご家庭でできるケーキの工夫としては、牛乳やミルクティーなどでふやかす方法などもありますよ。
- 2.生フルーツ果汁使用で、食べやすさUP!
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生フルーツは、果汁の酸味で唾液の分泌を促すことができます。
さらに、果汁をゼリーにして使用することで、飲み込みやすさを助けるのです。
ご家庭で生フルーツを使うときは、喉につまる原因になるかもしれないイチゴの種を取り除くこともおすすめします。
- 3.日本ならではの食の楽しみ方!
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店頭では常時8種類程度のケーキをご用意しております。
ショートケーキやモンブランといった定番メニューに加えて、季節に合わせておはぎやさくらもちなど和菓子をモチーフにしたケーキもあるのです。
みなさんも、夏のスイカや冬の牡蠣鍋など、四季折々の旬のものを食べるとき、嬉しい気持ちになりませんか?
カムリエでは、口腔機能が低下した高齢者の方にも同様に、食を通して四季を味わい、見た目にも楽しんでいただく工夫を大切にしています。
- 4.見た目や食感が異なる層をつくることで食欲をそそる!
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食欲を引き出すことも、食事の大切な役割のひとつです。
例えばショートケーキなら、生クリームの白・イチゴの赤・スポンジの黄色の断面が特徴的ですよね。
私たちがケーキを見たときに食べたいと思うのは、ケーキを見たときに“これから食べるものはケーキ”だと認識できるからです。
そこで、口腔機能が低下した高齢者の方にも、見た目でケーキだとわかってもらえるように工夫することで「食べたい」という食欲につながります。
これをきちんとお伝えするために、ケーキの断面は層になるように仕上げています。
“クリームの塊”ではなく“ケーキ”として、層ごとに食感を変える工夫もしているんですよ。
- 5.すくいやすくて食べやすい形!
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自分で食事を食べられるということは、高い生活の質を保つためにも重要なことです。
カムリエでは、ケーキをホール型ではなく四角型にしています。
これは、ケーキをスプーンで一口ずつ分け、すくいやすくするための工夫です。
食事介助をする方にとっても大きさを調整しやすく、お口に入れやすいのもポイントです。
ぜひ、自宅や介護職員の方も意識してみてくださいね。
ケーキが栄養摂取の補助になることも
今井:ケーキを楽しんでもらいながら、安全や機能を維持するためのたくさんの食事の工夫をしているのですね!ぜひ、ご家庭や施設の方にも取り入れてほしいと思います。
カムリエさんのケーキは私も頂きましたが、何も言われなければ普通のケーキだと思ってしまうくらい、とても美味しかったです!
誕生日やクリスマスなど特別な日に、ぜひオススメですね!
志水さん:そうですね、特別な日にはもちろん、イベントや日々のおやつとしても楽しんで頂ければ嬉しいです。
また、食欲低下時の栄養補給としても、ケーキがご活用できる場合がありますよ。
今井:栄養補給にケーキですか!?そういうときはお粥やおじやなど、身体に優しいものをというイメージがありますが…。
志水さん:例えば、通常の介護食は進んで食べようとしなかったのに、ケーキは積極的に食べてくれたというお話も伺っています。
甘いものは別腹とも言いますが、少しでも食べられるものを食べることが、栄養不足を補う助けにもなるのです。ケーキを食べることで、エネルギーや乳たんぱくを摂取することができますよ。
今井:なるほどッ!ケーキは特別な日にということだけでなく、食事のサポートとしても活用できるんですね。
介護職員の方にとっても、利用者さんによって違うものを作る手間がなく、同じものをみんなで食べられるということは、時間的メリットがあると思います。
介護施設でも日常的に活用して頂けそうです。
食事の工夫は調理方法以外にもある
今井:ところで、カムリエさんのコンセプトである「食べて幸せ、明日のえがお」にはどのような想いが込められているのでしょうか?
志水さん:食べるということは、生きるということに直結しています。
それを考えると、食べるという行為ができることはとても幸せなことです。
ですが、多くの方にとって“食べることができること”は当たり前すぎて、食べることの幸せをなかなか感じることはできません。
病気や障害を持ったときに初めて、その大切さに気づくことが殆どです。
ですから、「当たり前にできていることが、幸せ。」ということを、お店の活動を通してお伝えしていければと思いますね。
今井:食べられる幸せを伝えていくために、カムリエさんではケーキ以外にも取り扱いもあるんですよね?
志水さん:そうなんです。介護をされている方の負担を減らすような商品として、常時100種類の各メーカーの介護食を取り揃えています。
美味しくて手軽なレトルト製品がありますし、管理栄養士や介護食アドバイザーが日々のメニューや商品選びのアドバイスもしています。
やはり在宅介護をしている方が、毎日介護食を作るのはなかなか大変なことです。
自分でぜんぶ作ろうと無理をせず、さまざまなレトルトや専門家を頼っていただければと思います。
志水さん:また、食事には食器やカトラリーがつきものですが、この料理の器が食欲に影響することもあります。
一般的な介護用食器や自助支援食器などは、安全や機能的な側面からはよく考えて作られています。
しかし、どうしても今まで使っていた食器とは、質感や見た目が違ってしまうものが多いのです。
そのため、同じものを食べようと盛り付けても美味しそうに見えにくく、食が進まないということも少なくありません。
そこでカムリエでは、質感や見た目については普段の食器と同じですが、食べやすさも考慮している食器やカトラリーも取り揃えています。
みなさんも、もし介護されている方の食欲が進まないな…と感じたら、食べやすさが考慮されている食器のなかで、お気に入りの食器を一緒に探してみるのも良いかもしれませんよ。
最後に一言
いかがでしたか?日々の生活の中で、どれだけ沢山の楽しい時間を生み出せるかが「レク」の本質です。
食事を通してコミュニケーションが起こり、楽しい時間が生まれる。
ちょっとした工夫で、食事やおやつも「レク」の時間として過ごせるんですよ!
次回もお楽しみに!